ありふれているけれど優秀な物質・ラクトフェリン

ラクトフェリンの効果

2020年12月17日 11時02分


ラクトフェリンには、強力な鉄イオン捕捉力によるさまざまなすぐれた効果があります。 

1.バクテリアに対する効果

ラクトフェリンには強力な抗菌作用があります。多くの細菌は生存・増殖に鉄を必要としますが、ラクトフェリンは周囲の鉄を奪い去ることでバクテリアの増殖を抑制します。
鉄イオン捕捉力だけではなく、ラクトフェリンはグラム陰性菌の細胞膜に必要な物質に結びつき、細胞膜を弱体化させることでも抗菌作用を発揮します。
反対に、乳酸菌やビフィズス菌はあまり鉄を多く必要としないので、ラクトフェリンはこれらの菌に悪影響を与えず、むしろ増殖を支援するはたらきをします。
ラクトフェリンは、ヒトの母乳でも特に出産後5日目までに出る「初乳」に豊富に含まれ、免疫力が弱い新生児をバクテリアから守っていると考えられます。 

 

2.ウィルスに対する効果

ラクトフェリンは、C型肝炎ウィルス(HCV)がヒト体細胞に侵入するプロセスを阻害します。ウシ由来のラクトフェリンをC型肝炎患者に飲ませると、HCVの血中濃度が低下すると報告されています。HCV以外にも、B型肝炎ウイルス(HBV)・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)・単純ヘルペスウイルス(HSV)・ヒトサイトメガロウイルス(CMV)・ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)の複製を阻害することがわかっています。 
 

3.免疫力に対する効果

ラクトフェリンは、好中球の分泌物にも含まれており、炎症や細菌感染に応じて血中に放出されます。ナチュラルキラー細胞の攻撃性やマクロファージの貪食性も、ラクトフェリンにより活性化します。B細胞やT細胞の増殖も促進します。
ラクトフェリンは、みずからが持つ抗菌作用以外にも間接的に免疫系を支援するはたらきをしています。 

 

4.脂質代謝改善効果

ラクトフェリンは、成熟脂肪細胞の成長をさまたげる作用を持ちます。また、マウスにラクトフェリンを経口投与したところ、血液中の中性脂肪と遊離脂肪酸が減り、肝臓中の中性脂肪とコレステロールが減ったという研究もあります。ヒトにおいても、ラクトフェリン投与による体重減少、内臓脂肪の減少という効果が臨床試験で確認されています。 
 

5.傷を治す効果

ラクトフェリンは、真皮を構成する繊維芽細胞や、表皮を構成する角質化細胞が傷を治そうとする作用を促進します。また繊維芽細胞によるコラーゲンやヒアルロン酸の生成も助けます。 
 

6.抗酸化作用

老化の原因のひとつである活性酸素の中でも最大級の酸化力を持つ物質にヒドロキシラジカルというものがあります。ヒト体内におけるヒドロキシラジカルの生成には、余分な遊離鉄イオンが触媒として関わっていると考えられます。ラクトフェリンは鉄をうばいますので、ヒドロキシラジカルの生成も抑制します。 
 

7.抗ガン作用

ラットにガンを発生させる実験で、ラクトフェリンの経口投与により、発ガンや腫瘍の転移が抑制されたとする報告があります。ラクトフェリンは腫瘍細胞のアポトーシス(細胞自死)を誘導し、腫瘍細胞の血管新生をさまたげることで、酸素と栄養の供給を断ち、腫瘍組織の成長を防ぎます。 
 

8.骨の形成の促進

ラクトフェリンは、骨芽細胞の増殖・分化を促進すると同時に、破骨細胞の骨吸収を抑制、骨の形成を支援します。骨粗鬆症のラットにラクトフェリンを経口投与したところ、骨密度が上がったという実験報告があります。 
 

9.歯周病治療効果

ラクトフェリンは唾液にも含まれており、口の中の病原性バクテリアや歯周病菌に対する抗菌作用を発揮します。ラクトフェリンを摂取すると、歯周ポケットの歯周病菌の数が減少し、歯周病の症状が軽減されます。さらに、ラクトフェリンは歯周病菌が分泌する毒素を中和するほか、歯周組織の炎症や破壊を引き起こすサイトカインの発生を抑制します。
 
このように、ラクトフェリンは「多機能」です。
哺乳類が生物進化の過程で身につけた、きわめて強力な物質なのです。

 
 ラクトフェリンに副作用なし
この世の薬の多くは、量と使い方によっては毒にもなり、逆に毒の多くは、量と使い方によっては薬になります。このことは特に、植物由来の成分について言えます。動くことができず、動物に食われる一方の植物は、食われたくないものですから、進化の過程で「食べたら不利益をもたらす」成分を身につけてきました。だから、植物が持つ成分は基本的に「毒」の傾向になります。
そういう事情から、薬の多くは副作用というものを持ちがちです。
 
しかし、ラクトフェリンには重篤な副作用は認められていません。ラットやヒトに繰り返しラクトフェリンを経口投与する安全性試験が行われていますが、重篤な副作用は報告されていません。
アレルギー反応を引き起こすアレルゲン性も、たいへん低くなっています。